またひとつ臨界点を越えた、そんな印象が残りました。今日の福井でのライブの感想です。もしこのツアーが「平均80点を目指していこう」というスタンスで始められたものだったとしたら、断言しますが、今日の演奏はなかったでしょう。素晴らしい時間でした。
変わっていこうとし、新しい何かを手にしようとするためには必ずリスクが伴います。その可能性を肌で感じながら、常に気持ちを「最前線」にもっていくという作業、これはミュージシャンにとってだけではなく、すべての人にとって大切なことだと思います。僕は今日、そのひとつの実現を見た思いです。それから今日、僕は思いました。僕たちが作る音楽はいつだって素晴らしい、でも、それに共感してくれる人々のありようは、もっと素晴らしい。ステージというのはやはり、コミュニケーションの舞台なんですね。
たとえば演奏中にふと目が合ったひとりのお客さん、その人の気持ちというものは(一瞬の出来事ではあるけれど)こちらには不思議と手に取るようにわかるものです。そのとき、こちらが思いつきのフレーズで気持ちを返せば、それもちゃんと機能して伝わっていく。そういう「対流」の実感が確かにあるのです。僕にとって今回のツアーは、色々と教わることの多い、実り多いものになっていると思います。はじめて自分の琴線に触れる音楽を聴いたときの、あのなんとも説明できない、たまらない感じ、ああいう感情が双方にリアルタイムで次々と生まれてくるツアー、言ってみればそういうものになってきている。
…しかしそんな中、他のメンバーを北陸に残し、僕は一時帰京しなければなりません。ツアー中といえど、容赦なくあるのです。次の作品のためのスタジオ作業が…。ここ最近ろくに寝ていないので、実際ちょっときついですね。
でも変な話、もし明日死ぬとしても僕は後悔しません。そういう気持ちで、僕はいま音楽を残しています。素晴らしい作品になると思います。ご期待ください。
写真は自宅近所の桜。こういう咲き方するから、散り際が余計に寂しいんですよね。