お知らせ

今日からしばらくの間、この「ドーナツ・ライフ」と「ひつじフォーラム」の更新作業を休止します。というか、できなくなるのです。なぜかというと、僕は毎年、年末年始を宮崎県の田舎で過ごしているのですが、そこにインターネット環境というものがないからです（いや、電話はあるからできなくはないのか？プッシュ回線じゃないけど…）。そこはもう本当の田舎で、日が落ちると家の周囲は真っ暗闇になります。街灯もないです。なので夜になって、何かのはずみでアイスクリームが食べたくなったりすると（実は去年の話）、懐中電灯を持って真っ暗な林道をひとり、えんえん歩かなければいけない、ということになります。県道に出てコンビニの明かりを確認したとき「おお、文明だ…」と思った、というのは嘘ですが、でも「ああ、あそこには人がいるんだな」とは思いました。そういうところなんです。風呂は五右衛門風呂。でも自慢できるところもあります。とにかく星が見える。地上に光るものがない上に空気が澄んでいるので、降るような星が見えます。これを見るのは毎年楽しみですね。

そういうわけで（一応、PowerBookは持っていきますが）これが今年最後の書き込みになるかと思われます。それからフォーラムの方はようやく活気づいてきた感じがあるので、そろそろ「うさぎフォーラム」の開催を考えています。テーマは、何かこう、じっくり考えられるものがいいですね。「ひつじフォーラム」の方も、べつに「僕の返信がついて完結」ではないですから、みなさん、乗れそうな話題があったら乗った方が面白いと思いますよ。

それから僕は、みなさんからのメッセージを特に選別して公開しているわけではありません。原則的に、寄せていただいたメッセージは公開する、というスタンスでやっております。ただ、多くの方の目に触れるという観点から、ひとつポイントを提示しますと、やはりメッセージはあまり長くない方が良いと思います。それと質問の場合は「的を絞る」ということを意識すると、誰の目にも、ぐっと読みやすいものになります。やはり公開フォーラムですから、みなさんが投稿しているメッセージが「僕に対してのもの」であると同時に、「誰かに対してのもの」になっていてほしい、と思います。でもこれはまあ、管理者としての僕の理想ですから、みなさんはあまり固く考えず、これまでと同じように楽しんでください。

それではみなさん、良いお年をお迎えください。

華

「Happy Birthday」のプロモーション・ビデオを撮影しました。「結局、演奏以外の何かって説明にしかならないんだよね」監督との打ち合わせの中でそのような結論に達したわれわれは今回、楽曲の持つストレートなメッセージを映像に託すべく、演奏シーンに徹しています。そして「何かこう、ゴージャスな感じがいいと思うんだけど」という監督に対して、僕が提案したのが「あたり一面に散らばる、きらきらしたリボン」「大きな熊のぬいぐるみ」「ファーコート」そして突然の「ツインバス」。これはけっこう良かったと思います。華々しくて。僕はもちろん、普段はツインバス踏んでいませんけどね、でも、そういうことじゃないんです。曲の映像化っていうのは。今回はもう、はちきれんばかりの作者のメッセージ「僕たちは何度でも生まれ変われる！」という言葉が最初にあったわけでして、えー、そのイメージをドラマーの視点で追求しますとね、これはもう、赤ラメのツインバスしかありえないんですね。これ以上祝祭的な、視覚的にも人を鼓舞できるようなドラムセットがあるのか、という。それが映像の中で、全肯定的に働いてくれればと僕は考えております。編集された映像を見るのが今から楽しみです。

猫拳

河野丈洋がお送りしているドーナツ・ライフ、今夜はまずお便りを紹介しましょう。「知人宅にて。なかなかナイスショットだったのでよかったらどうぞ」。お便りは、東京都にお住まいの中澤寛規さんからいただきました。どうもありがとう。これは猫拳、でしょうか。かわいいですね。「手を出してきたと思ったら、なぜかそのまま静止したので撮った」ということですが、猫と、中澤さんとのやりとりが微笑ましいと思います。お話からは「お互いにかまってやっている」というような雰囲気が想像されるのですが、しかしそれにしても、この猫はいかにもどうでも良さそうな表情をしていますね。猫の猫たる部分がよく出ている一枚だと思います。さて、それではここで音楽をお届けしましょう。曲はthe Fibsで"Don't Deceive"です。

SUKIYAKI

ついに、思いが完結しました。今年初のすき焼きです。しかもわたくし、ごちそうになってしまいました。「引越祝いに」ということで、ツアーパンフの製作に関わっている、とあるスタッフのご好意に与ったのです。老舗「今半」で、しかもそのすき焼きは「特上」。すき焼きを食べることがそもそも１年振りでしたから、その味といったら、もう、マリファナ級でした（やったことないけど）。やっぱりすき焼きって、幸福な料理ですね。その後は中村航さんと飲みにいって、居合わせた真心ブラザーズの桜井さんや、ゴスペラーズの酒井さん、北山さんと初めてお会いしました（長嶋有さんとは夏の山荘以来、久しぶりに）。今思えば奇妙な組み合わせですね。でも楽しく、有意義な話もできました。音楽はあらゆるボーダーを超えるんだな、と、あらためて実感。それから、新調したという桜井さんの名刺はかっこよかったな。僕も名刺作ろうかな。

あとはプレス

伝書鳩が飼い主の手をふっと離れたところを想像してください。あるいは、手のひらをよじよじと登っていたてんとう虫が、人差し指のてっぺんから飛び立ったところを。いったい何の話をしているのかと言いますと、つまり僕は今日、みなさんにお知らせしたいことがあるのです。マスタリング作業が無事終了して、新しいアルバムがわれわれメンバーの手を離れました、と。もちろん、それらの曲はGOING UNDER GROUNDというバンドが作ったものには違いないのですが、今やそれは重要なことではありません。なぜなら、音楽は誰かが独占できるようなものではなく、すべての人のものだからです。僕はべつに理想論者ではありませんが、権利などの現実的なことの他にも、音楽にはこういった側面があると信じています。新しい曲それぞれが自分の子どもたちだとしたら、僕は彼らの旅立ちに際してこう言ったでしょう。「たとえどんな人に出会っても、見返りを求めることなく、その人のことをただ愛するんだよ」
僕は大まじめにこれを書いているのですが、誰かが吹き出す声が今にも聞こえてきそうな気もしますね。僕はただの理想論者なのだろうか。

猫

イラストレーターであり、僕の幼なじみでもある宮尾くんがブログを始めたようです。みかんに、マーカーで絵を描いていました。サッカーボールのような猫の顔のような、そんな絵を。ちなみにこの写真は、９月の僕の誕生日に彼が贈ってくれた猫ポットです。知り合って１７年になりますが、僕は初めて彼から誕生日プレゼントというものをもらいましたよ。まあ、僕もあんまり言えたものではないんですが…それはさておき、宮尾という名といい（猫の鳴き声のようだ）、みかん猫、猫ポット、そして自宅にはリアル猫ネスタ。どうも彼は「いつも猫とともにある」みたいなところがありますね。そのうち"May the Force be with you."（フォースがあなたとともにありますように）みたいなことを言い出すかもしれないな…。うーん、そんなことを考えていたらなんだか「スター・ウォーズ」が見たくなってきてしまった。えーと。今日から大阪、広島、福岡をまわります。フォースがわれとともにありますように。

生姜

新宿でうどんを食べていたら、突然に店のブレーカーが落ちました。一瞬の暗闇のあと、非常灯があたりをうっすらと照らします。わりと大きな店舗で、お客さんも僕の他にたくさんいたのですが、怒る人もなく、とくに何事も起きませんでした。まあ「ぶつん」という音が響いてあたりが暗くなったわけですから、それだけで誰でもだいたいの状況はつかめますよね。僕も「あ、落ちたか」くらいにしか思いませんでした。でも僕の向かいに座っていたおじいさんはすごかったです。というのは、それに対するリアクションというものが一切、まったくなかったからです。騒いだり怒ったりすることはなくても、ちょっとあたりを見回すとか、動きが止まるとか、この場合そういう反応が誰にでも表れるものだと思うのですが、それが全然ない。彼はそれまでとまったく同じ様子で（息が漏れる程度の小さな声で「ふむ、ふむ」とか言いながら）ずーっとうどんを口に運び続けていたのです。しかもそのうどん、よく見れば表面が大量の葱と生姜で埋め尽くされている。百歩譲って葱はまあ良しとしても、そのこんもり積もった生姜はいったい何なのだと、薄い闇の中、僕は考えておりました。電気はなかなか戻らず、おじいさんの後方では高校生くらいの女の子の集団が「停電？停電？」と嬉しそうに話し合っています。僕はそのとき、昔の地下鉄銀座線がときどき真っ暗になったのを思い出していました。子供心に、あれは楽しかったな。

夢

ふしぎな夢を見ました。スーパーマーケットの外側に鉢植えを売っている一角があって、僕はそこを歩いています。あたりは夜で、目に映る街並は懐かしいようでも、初めてのようでもあります。いつしか僕のとなりにはひとりの女性がいて、その人の名が「ワタベトシコ」だということが、なぜだか僕にはわかります。彼女は中学生くらいの容姿をしていて、夢の中の僕も彼女と同じくらいの年齢になっています。彼女は語りかけます。「昔いっしょに西瓜を食べたよね。覚えてる？」僕の言葉は出てきませんでしたが、彼女は構わず続けます。「水かけ祭ってあったでしょう」僕はそこでやっと相槌のようなものを打ちました。それは、僕が昔住んでいた東京の深川あたりではよく知られたものだったからです。子どもが担ぐ神輿も出て、僕は自分が参加したときのことを思い出したりしました。すると、それまで僕のとなりにいた彼女はすっと足を速めて、先を歩いて行きました。そして背中を向けたまま、こう言ったのです。「私はね、そのときに死んだの」

僕の親戚には「渡部」という姓があるので、なんとも気がかりな夢でした。トシコさん、あなたはいったい何が言いたかったのですか…。

M1300

靴を新調しました。いままで履いていたものとそっくり同じ、ニューバランスの「M1300 classic」というスニーカーです。これはあらゆる点において僕にとっての最高のスニーカーで、買い替えるなら同じものにしようと前から決めていました。それにしても、こう並べて見比べてみると、古い方は「完膚なきまでに履きつぶされた」といった感じですね。実際かかとのあたりにはもう縫い糸がなくなっていて、張り合わせの生地がべろんとはがれています。当然、雨が降ればそこが水っぽくなるし、海岸を歩けば砂がいっぱい入ってきます。今までいろんな人に再三「おまえ靴なんとかしろよ」と言われ続けてきましたが…そう言いたくなるというのは、もっともなことだなあ（詠嘆）。これでは靴が可哀相というものです。とにかく、その「旧M1300」は丸５年働いて、今回ようやくお役御免となったわけですが、「もうこのボロを履くこともないのか」と思うと少し寂しいですね。デビュー以後の演奏はすべてこの靴でやってきたし、僕にとっては本当に大事なスニーカーでした。今までありがとう。そしてお疲れさま。

ありがとう

去る６日に開催したダスト・トレイルは、盛況のうちに終了しました。来てくださった方々には心から感謝します。そして平絵里香さんと近藤薫さんは、どちらも素晴らしいパフォーマンスを見せてくれましたね。あのような温かい心と美しい音楽を持ったミュージシャンたちと今回こういった形で共演できたことを、僕は本当に嬉しく思っています。僕はといえば、連日の不眠不休がそのまま声になったような感じでしたが…。でも、自分の音楽と向き合う時間は僕にとってはとても大切なので、仮に声がもっとひどい状態だったとしても、僕はやはり感謝をしたと思います。歌えることや、素晴らしい仲間がいること、そしてそれを見守ってくれるお客さんがいること、ちょっと大げさな言い方をすれば、たったひとりの表現者になった僕の目の前にもこんなに素晴らしい世界がある、ダスト・トレイルの舞台に立つとき、僕はそのことに感謝をせずにいられないのです。でも次回は体調万全にしていくぞっ。