福岡の海の中道海浜公園にて開催された「HIGHER GROUND 2006 前夜祭」に出演してきました。どんよりした天気が続いていた東京とは打って変わって、こちらはカラッとした快晴・・・いや、快晴というのは生ぬるいですね。あれは猛暑と言っても差し支えないでしょう。あまりの暑さに、この人も吠えてます。僕はといえば、こんなこともあろうかと用意しておいた帽子をかぶって、かんかん照りをひそかに楽しんでおりました。夏はやっぱり、こうでなくちゃ。ライブも非常に楽しかったです。ただ、演奏中、ドラムセットの至近をずっとスズメバチが飛んでいたこと以外は(以前も野外フェスでこんなことあったなあ・・・)。困るんですよね、こういうの。なにしろ、こっちは棒きれ振り回すのがお仕事ですから。幸い、われわれの間に誤解はなかったようで、攻撃されることはありませんでしたが。
そして、ライブ終了後は一路苗場へ。29日、30日の2日間にわたって「FUJI ROCK FESTIVAL 06」に出演するためです。われわれが演奏をすることになっていたのは、田代高原にある「SILENT BLEEZE」というエリア。「RED MARQUEE」や「GREEN STAGE」からはだいぶ離れたところにある、高台の草原です。ここに行くためには、苗場方面から、全長およそ5・5kmに及ぶという世界最長のケーブルウェイ「ドラゴンドラ」に乗る必要があります。所要時間、約20分。けっこう長いです。
そのかわり、このゴンドラからは色々なものが見えます。遠くに「FIELD OF HEAVEN」や「ORANGE COURT」などの会場、ダムの調整池と思しき、ヒスイ色の巨大な水たまり、あと臨時へリポートなんかもありましたね。聞いた話ではこのヘリ、「3分3000円」で遊覧飛行してくれるのだとか(高いんだか安いんだか、よくわかりませんが)。それから眼下には山肌を削る渓流、そしてそこから少し登った「けもの道」みたいなところでは、アライグマの親子の姿も見ることができました。身を寄せあうように丸まっていて、すごくかわいらしかったな。でも、一体あそこで何してたんだろう。
到着した「SILENT BLEEZE」は、こんなところです。演奏の時刻までかなりの余裕があったので、高台に登って全景を撮影してみました。右手の白い建物がゴンドラの駅です。駅の手前には、厚い雲が立ちこめています。この場所を別の言葉で表すなら、さしずめ「雲の上の別世界」といったところでしょうか。われわれも当然、この雲の中を抜けてここまでやって来たのですが、そのときの視界は四方が完全に真っ白で、実際「どこか違う世界に向かっているんだ」という実感めいたものがありました。その左の煙突のある建物はレストランで、この日の出演者、それからスタッフの待機場所も兼ねています。人が集まっているあたりでは演奏や、様々なレクリエーションが行われます。ちなみに、いちばん左側にちょっと写り込んでいるのは「DAY DREAMING」という別会場で、DJブースみたいな感じだったと思います。
僕が思っていた以上に、人出がありました。ライオンとか、トラとか、モグラの姿も見えます。あと、カラスとパンダと、アルプスの少女もいました。このみんなで、長縄を跳んだり、紙芝居を見たり、「だるまさんがころんだ」をやったりするわけです。そういった「ものの在り方」ひとつひとつが、この「SILENT BLEEZE」を非常にゆるーい空間にしているのですが、カメラのファインダーを通じて僕が感じたものは、それだけではありませんでした。なんというか、やはり、ここはオトナのための空間なのです。もうずっと昔に、手が届かないくらい遠くに行ってしまったはずの夏休みが、ここにはある。最低限の分別のあるオトナたちは、ここに集まったときからその空気を暗黙のうちに共有し、誰もがそれに基づいてアクションを起こしているようでした。これは状況に応じてどんどんルールを修正していくという子どもたちの遊び方に近いと思います。お仕着せなんてものでもなく、この「夏休み現象」は集団心理による自然発生的なもののように見えました。みんな心の底ではこういう場所を欲していたのかなあ、とか思ったりもしましたね。つまり、この特殊な隔離環境が、普段奥のほうに押し込められている意識を引っぱりだしているんじゃないか、と。
あんまりつまらん分析するのもまあ、アレですけど。でも、もうひとつ言わせてもらえば、動物たちの存在もかなり作用していると思うなあ。たとえばモグラがトコトコ歩いているのを見ても、最初はみんな「ああ、着ぐるみだよ」なんて思うわけですよね。当たり前です。でも、この環境では、その「当たり前」が心理的に変質していると思うんです。「考えるまでもなく当たり前」と思ったことを、本当に考えもしなくなって、つまりその存在を意識しなくなって、その結果いつの間にか自分が開かれている、というか。白昼夢みたいなへんなところだったけど、すごく面白かったなあ。
そういえば、われわれのライブについて全然書いてないですね。そっちのほうも楽しかったです。色々新しい試みもしましたので、書きたいことはそれなりにあるのですが、長くなるのでまた今度にします。