ちょっと前に「音楽主義」というフリーペーパーにアンケート協力という形で出ました。これはリハーサルスタジオとかレコーディングスタジオに置いてある、「音楽を作る人に向け」に発行されている小冊子です。なのでみなさんあんまり馴染みはないかもしれませんが、ウェブで全ページ閲覧できるようになっているので、もしよかったら読んでみてくださいね(「音楽主義」)。ちなみに同じ号に、いつもぼくらの音を録音してくれているエンジニア、比留間さんのインタビューも載っています。
さて、それでそのときのアンケート内容ですが「あなたの考える良い音って何ですか」というようなものだったんです。これは昨今全盛の圧縮音源についてどう考えますか、ということでもありますね。それについてのぼくの意見はそのバックナンバーを読んでいただくとして、ぼくはその取材以来、あらためて「カセットテープの音っていいなあ」と思ったりしています。これはもうクオリティ云々以前の話で、ただ好きなんです。しょうがない、と言っていいくらいのものですね。ぼくの音楽耳はカセットテープとともに育ってきましたので。
ぼくらがCDデビューした10年前、世の中にはまだまだカセットテープの需要があったように思います(でも主流はもうMDだったのかなあ)。ぼく個人はテープを使ってデモを作ったりしていたこともあって、音楽を外に持ち出すときはいつもカセットテープでした。部屋には常時たくさんのカセットテープがストックしてあって、好きな音楽をひとつのテープに吹き込んでいく作業はとっても楽しかったと記憶しています。
そういう自分の編集テープ作りっていうのは、今でもごく普通に行われていますよね? ただiTunesがあるから、今はデータの並べ替えで済むんだよなあ。つまり一回もプレイバックすることなくオリジナル編集盤が完成する。テープでせっせと編集するしかなかった当時のことを思うと、考えられないくらい便利になってますね。テープ編集だと、録音している間ずっとそれを聴いている必要があったために、とにかく時間がかかった(まあ、それが楽しいんだけど)。あとテープには「ノーマル」「ハイポジ」「メタル」の3種類があって、これを選ぶのにもちょっと考えたりしたものです。
ノーマルのテープにはだいたい「迫力の低音!」とかいう宣伝文句がついていて、実際使ってみてもしっかり低音が強調されているのだけど、実はこれ「中音域が弱い」ってことなんですよね。で、そのへんのレンジが、ハイポジではカバーされている。その上を行くのがメタルで、全帯域の再現性で言えばこれがもっとも高かったと思います。
だから自分で作ったデモをテープに落とす時、ほんとはメタルを使いたいのだけど、できた曲っていうのはだいたい3分半から4分くらい、長くて5分。つまり片面5分あれば事足りてしまうので、デモ用には10分テープがもっとも望ましいわけです。ところが「メタルの10分テープ」というもの、これがまったく売られていない! けっこう探したけど一度も見つけられなかったから、きっと存在しなかったのだろうなあ。
写真はうちの作業部屋にまだあったカセットテープの在庫。CDデビュー10周年ということでちょっと茶目っ気を出して、こんどデモをメンバーに渡す時にはカセットテープにしてみようかしらん。デッキないから聴けねえよ、って言われそうだけど。